騒音による嫌がらせとは?
一般的に騒音とは、人にとって好ましくない音のことで主に交通に関する音や建設工事などの騒音被害などが一般的にあります。しかしながら相手に対し、故意的に行われる嫌がらせ目的での騒音被害も増加しており、マンションなどの近隣トラブルの中でも特に大きな問題となっていて、対処が必要とされています。
騒音による嫌がらせ事例
・マンションの上下左右からの騒音に悩んでいる
・近くの工事の騒音が酷く眠れない
・一戸建てに住んでいるが隣の家の物音が響く
・低周波音が家中で鳴り響いているので、原因を知りたい
・近隣からの騒音に迷惑しているが、管理会社や大家が取り合ってくれない
・モスキート音による嫌がらせをされている
・近所のスナックのカラオケの音が夜中までうるさく困っている
・アパートの隣人が嫌がらせのように歌を歌ってくる
音の伝わり方の種類
空気音(空気伝播音) | ・話し声 ・スピーカーの音 ・楽器の音 ・ペット等の泣き声 |
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固体音(固体伝播音) | ・足音 ・家具を動かす音 ・ドアを開け閉めする音 ・スピーカーから床や壁に伝わる重低音 |
固体音は空気音とは異なり音の伝わり方が複雑で、音の判断が難しいです。木造アパートや鉄筋コンクリート造のマンションなどでも発生する為、厄介で深刻な騒音トラブルに発展しやすいと言えます。
騒音の受忍限度
受忍限度とは、一般的に社会通念上、我慢(受忍)ができる被害の程度のことで、騒音にも当然受忍限度があります。過去の判例でも子供が走り回ったりし、50㏈以上の騒音被害で受忍限度を超えているとして慰謝料が認められたケースも多く存在します。
受忍限度の基準
受忍限度の基準ですが、こちらは各自治体によって、騒音の規制基準というのが定めてあります。時間帯や地域によってその基準値は異なりますが、一定の基準値を超えることが証明できれば、受忍限度を超えていると判断し、慰謝料や損害賠償、差し止めなどの請求することも可能です。
また、音の大きさや頻度、騒音による被害などの証拠を提示することができれば刑事罰に問うことも可能な場合もあります。
実際の相談事例
40代男性
現在のマンションに引っ越しをしてから、上の階の騒音に悩まされています。家具を引きづるような音や、ドアの開け閉め音、重いものを落とすような音など毎日のように響き渡ります。何度か困っていることを伝えているのですが、上の住人は「何も音を出していない」と全く認めません。
日に日に騒音は酷くなるばかりで、眠れない日もあり肉体的にも疲労が溜まっています。また、わざと騒音を出しているのではないかと思うくらい悪質な音を立ててきます。
管理会社へも相談しましたが、相談してから被害が酷くなり我慢の限界です。
60代女性
一戸建てに住んでいるのですが、隣に引っ越してきた家族から騒音による嫌がらせを受けています。雨戸をわざと強く開け閉めしたり、大音量で私の家に向かって音楽を流してきたりしています。初めは気にしていなかったのですが、最近はほとんど毎日のようにやってくるので我慢できません。
一度話し合いに行ったのですが、全く聞く耳を持ってくれず自分たちだけでは解決できません。一戸建てなので簡単に引っ越すことはできませんし、長く住んでいる土地なので問題を解決し平穏な生活を送りたいです。
どうにかならないでしょうか。
騒音による嫌がらせの対処方法
相手との話し合い
最も穏便な解決方法で望ましいものが、相手と話し合いをすることです。しかし、相手方に直接苦情を言いに行くなどの行為は、とてもリスクがあるのでお勧めできません。例えば手紙で騒音被害に困っていることを伝えることや、管理会社や大家さん立ち合いのもとで話し合いを行うことも解決方法の一つとなります。
相手が騒音を出してることに気付いてない場合や、心当たりがさり素直に謝罪してくれるようであれば解決へ進んでいくでしょう。
しかし、一方で「音を出していない」、「身に覚えがない」などと騒音を認めないこともあります。そのような場合は、騒音が発生していることを測定し、証拠を提出するなどの対応が必要となります。
自治体や警察の協力を得る
相手との話し合いで解決が難しい場合は、自治体や警察の協力を要請することも騒音による嫌がらせを解決するには有効です。自治体などの公共機関へ相談することで、騒音の被害状況を調査し、原因や実情を把握した上で相手への改善指導をしてくれる事もあります。
また、警察も直接相手へ注意してくれる事もあります。警察へ注意された後、騒音を出し続けた場合、警察の制止を無視したということで刑事罰に該当する可能性もありますので、有効な解決方法と言えるでしょう。
法的手段で訴える
弁護士へ相談し、裁判など法的手段を行うことも騒音による嫌がらせを解決する上ではとても有効な手段となります。民法709条の不法行為により、騒音行為の差し止めや損害賠償請求をするケースが多く、上記のような手段で騒音が収まらない場合は、民事事件で訴えることも必要と言えます。
法的な手段を取ることで、相手方も財産や社会的信用を失う可能性がありますので非常に有効な解決方法です。
法的な手段を取る場合は騒音被害の実証、客観的な証拠が必要となるため、他の対処法と比較し非常に手間がかかります。有効性の高いデータや証拠が必要な場合もあるため、専門家へ依頼することをお勧めします。
ご自身でやってはいけないこと
騒音による嫌がらせは、場合によっては日常生活をまともに送れないなどと、かなり深刻な問題も多く存在します。我慢ができないほどの被害により、何も考えずに行動をしてしまい大きな事態に発展してしまう恐れもあるため、注意が必要です。
その為、騒音による嫌がらせ被害を受けている時においてやってはいけないことを以下でご紹介します。
直接苦情を言いに行く
騒音被害を受けている本人が、相手方へ直接苦情に行くことは避けましょう。当事者同士で話し合いをしても、感情的な話になってしまい話が前に進むことは少ないです。また、相手を刺激してしまい更なる嫌がらせに発展してしまう可能性もあります。相手と直接話し合いをするのであれば、管理会社や客観的に判断できる第三者の同席のもと話し合いを行いましょう。
仕返しをする
苦痛な騒音に腹を立て、同じように仕返しをすることは危険です。仕返しをされると、返って事態が悪化しとても深刻な問題へ発展するケースも多く存在します。また、状況が泥沼化して今後解決するのが困難になることもあります。集合住宅などの場合他の住民へも迷惑を掛けてしまう可能性もあるので、仕返しを考えるのであれば正当な手段で考えましょう。
我慢する・放置する
騒音被害が深刻化し、何をしても状況が変わらないからと言って我慢するのは良くありません。騒音被害を放置して我慢をし続けると、精神的にも耐えられなくなり日常生活へも支障がでてしまう可能性もあります。酷い場合は、仕事ができなくなるほどのダメージを負うこともある為、問題を放置せず周囲の人や専門家へ相談をし、常に解決する方法を追求しましょう。
騒音による嫌がらせの解決に必要な証拠
一般的な騒音であれば、管理会社や大家、自治会町などからの注意等で収まることもあります。しかし、「嫌がらせ」によるものとなればそう簡単ではありません。警察や弁護士などの介入なしでは解決できない可能性が非常に高いです。
しかし、警察や弁護士などへ介入してもらうには、必ず客観的な「証拠」が必要となります。どのようなものが証拠と呼べるのか?騒音が嫌がらせだとどう証明したらいいのかを以下で紹介します。
頻繁に記録をする
騒音による嫌がらせを受けた日時や頻度を細かく記録をしておくことが大切です。メモや日記等で構わないので記録をしておくことで、第三者へ被害を訴える際にスムーズに事態を進めることができます。また、被害の記録を用意しておくことで、最終的に全ての記録と合わせて被害を立証できる可能性もあります。
周囲の証言を取る
同じように被害を受けている人が周りに居るのであれば、その方達の証言を取っておくこと良いでしょう。また、近隣住民や家族、その他親戚に現場に立ち会ってもらい証言を取る方法などが有効です。証人の属性や証言内容によって有効性に差はありますが、証言も一つの証拠として効力があります。
精神的・肉体的被害がある場合は診断書を取りましょう
凄まじい騒音被害によってうつや睡眠障害、身体への影響が現れたら病院へ行き診断書を取っておきましょう。騒音被害との因果関係が証明されれば慰謝料請求や訴訟を起こす際、役に立ちます。
嫌ががらせかどうかの証明をする
騒音による嫌がらせ被害を解決するには、騒音が嫌がらせ(故意的)によるものだと証明できるかどうかが重要です。単純に騒音被害ということだけではなく、「嫌がらせ」だと認められなければ十分な処分が相手に下されず、再犯の恐れや被害が悪化してしまう可能性も考えられます。
一定期間継続して騒音の測定を行い、被害を受けている方の行動パターンや生活状況と騒音が起きている頻度が一致していれば、嫌がらせだという証明も可能です。
明らかに自宅に居る時だけ騒音が激しい場合や、就寝時のみ音が出ている場合などは「嫌がらせ」だと判断することができます。