業務上横領の「証拠がない」状態は非常に危険!

業務上横領の疑いが浮上した際、「証拠がない」状況は企業にとって非常に危険な状態です。
なぜなら、業務上横領を立証するためには、単なる金銭の不一致だけでなく、「故意性(不法領得の意思)」を示す客観的な証拠が必要不可欠だからです。
証拠がないまま対応を進めようとすると、横領の事実を立証できず、最終的に泣き寝入りすることになるだけでなく、誤った対応により、逆に企業が訴訟リスクを負うことにもなりかねません。
また、業務上横領罪には公訴時効(最長7年)が存在します。
証拠集めに時間をかけすぎていると、事実の解明と法的措置が可能となる期間を逃してしまうリスクもあるため、発覚後の初動対応が極めて重要となります。
業務上横領発覚時に絶対にやってはいけないこと

横領が発覚してしまっても、パニックにならず冷静に対応することが、法的リスクを回避するうえで最も重要です。
まずは、冷静になって、対象者が故意で行ったという証拠を押さえる必要があります。
そのために、企業が独断で動く際に絶対にやってはいけないことをお伝えします。
1回の行為だけで判断することや決めつけること
業務上の不正行為において、横領を立証する最大のポイントは、従業員が故意で行ったかどうかです。
そのため、従業員が一度だけ不正行為のような行動をしたところで、すぐに横領と結論付けるのは軽率な判断と言えます。
たとえば、実際の売上金と帳簿の売上金が合わないという場合でも、それが単なる計算ミスや経理処理上の誤りである可能性も考慮に入れる必要があります。
このような状況で即座に疑念を持ち、行動に出ることは、従業員との信頼関係を損ない、不当な扱いと受け取られかねません。
横領は繰り返し行われることが一般的な犯罪であるため、時系列に沿った監査や調査を行い、不正のパターンを把握することが重要です。
証拠不十分な状態でいきなり処罰をすること
証拠が不十分な場合に懲戒解雇などの重い処罰をすることは、法的リスクを大幅に高める行動です。
懲戒解雇は最終手段であり、行うにはその処分が適正であると認められるだけのきちんとした
証拠や厳格な手続きが必要です。
万が一、横領を疑われる従業員が無実であった場合、誤った解雇は不当解雇となり、企業が多額の損害賠償責任を負う原因となります。
証拠がない状態での解雇は避け、事実関係が明らかになるまで適切な調査を続けることが重要ですし、調査の手順においても、公平性を保ちながら従業員の権利を尊重することが必要不可欠です。
また、証拠収集の段階で、社内の限られたメンバー以外に情報が漏洩すると、企業イメージの低下や株価への影響など、二次的な被害を防ぐためにも、初動の対応においては秘密を厳守しなければなりません。
業務上横領の立証に必要な証拠とは?

業務上横領を法的に立証するためには、単なる金額の不一致を示す証拠だけでなく、「故意性(不法領得の意思)」を示す証拠が必要です。
正確な証拠収集は、事件を解決するうえでの鍵となります。
ここからは、業務上横領を立証する際に必要な証拠について、具体的にご紹介します。
単なるミスではない「故意」を示す証拠(間接証拠)
横領事件における「証拠」は、帳簿上の不一致といった直接証拠だけでなく、その不一致が意図的かつ反復的であることを示す間接証拠の積み重ねが非常に重要です。
間接証拠の具体例としては、次のようなものが挙げられます。
- 横領行為と同時期の不自然な借金の返済や高額な私的な支出
- 不正行為が発覚した後の不審な行動や証拠隠滅の形跡
- 通常では不可能な高級品を購入するなど不自然な生活水準の向上
これらの間接証拠を時系列に沿って収集し、「単なるミスではない」と客観的に示すことで、「故意性(不法領得の意思)」を立証することが可能になります。
メールやPCの利用ログなどのデジタル証拠
現代の横領事件において、デジタルデータは非常に有力な証拠となります。
デジタルデータの証拠としてなり得るものには、次のようなものがあります。
- 電子メールやチャット履歴
共犯者とのやり取りや、不正行為の計画に関する記述
- PCの利用ログ
業務時間外の不審なファイルアクセスや、不正会計処理を行った記録
- クラウド上のデータ
証拠隠滅前に削除された可能性のある重要書類
これらのデジタル証拠は、一度削除されてしまうと復旧が難しい場合があるため、情報が消去される前に、メールのバックアップを取る、PCの利用履歴を保全するなどの緊急対応が必須です。
また、これらの証拠を集める際は、デジタルフォレンジックの知識を持つ探偵事務所や専門家と連携すると良いでしょう。
防犯カメラや領収書、事情聴取など会社内部にある証拠
社内に存在する証拠は、横領の疑いを持った際の重要な手掛かりとなります。
しかし、それだけで法的な立証を行うには限界があるのが実情です。
確実に証拠をつかむためには、これらの限界を理解したうえで、適切に活用することが重要です。
- 防犯カメラの映像
防犯カメラは不正行為の瞬間をとらえる有力なツールです。
しかし、多くのカメラは録画データの保存期限に制限があり、過去にさかのぼって確認できない場合があります。
また、映像の確認する際は、プライバシーの問題にも触れるため、関連する法律や規制を遵守する必要があります。
- 領収書や伝票などの財務書類
財務関連の書類は、横領行為を立証するうえで非常に重要な書類です。
特に領収書、伝票、帳簿などの不一致を調査することで、不正な取引や不審な経理処理を発見することができるでしょう。
しかし、横領犯は不正が発覚しないよう、巧妙に偽装・改ざんしているケースが多々あります。
そのため、自社での内部監査や経理担当者だけの調査では、専門的な不正会計の手口を見破れない可能性もあります。
- 関係者への事情聴取
関係者の証言は、不正行為の背景や手口を知るための重要な手掛かりとなります。
ただし、証言自体はあくまで間接的な情報であり、それ自体が決定的な証拠となることは稀です。
また、事情聴取は極めて慎重に行わなければ、不公平な圧力とみなされ、証拠隠滅のきっかけとなったり、調査自体が失敗に終わるリスクもあります。
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専門家に依頼する前に自社でできる準備と注意点

横領の証拠がない場合は、企業調査を取り扱っている探偵事務所に依頼するのが有効です。
しかし、依頼する前には、いくつか準備しておきたいことや、注意点があります。
ここからは、企業内でできる事前準備と、自社で調査する際に踏み込んではいけない行動についてご紹介します。
【事前準備】関係書類を保管する
調査を依頼する前に、横領が疑われる期間のすべての関係書類、特に領収書、伝票、帳簿、契約書などの原本を保管してください。
これらの資料は、探偵や弁護士が調査を進めるうえでの基礎情報となります。
コピーだけでなく、原本が最も確実な証拠となります。
【注意点】自社で調査をする際に踏み込んではいけない行動
証拠集めは対象者に調査が気付かれてしまわないように進めることが重要です。
従業員が監視されていると感じ取った瞬間、証拠隠滅や反訴などの法的手段を講じるかもしれません。
企業が独断で行う調査には限界があり、次の行為はプライバシー侵害や名誉毀損のリスクを伴うため、避けるべきです。
- 対象者の私的なメールやSNSアカウントへの不正アクセス
- 対象者の自宅や私物を無断で調査すること
- 尾行・張り込みなどの行動調査
こうした調査は、法律の専門家や探偵事務所といった外部の専門家に任せることが、安全性を確保し、確実に証拠を集めるための最善策となります。
当社「T.L探偵事務所」では、横領に関する企業調査を行った実績があります。
社内で横領の疑いがある際は、まずは一度ご相談ください。
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横領の証拠集めを解決する探偵事務所の役割

証拠がない状況を変え、横領の事実を法的に立証可能な形で明らかにするために、不正行為の証拠集めに強みを持つ探偵事務所への相談が最も有効な手段となります。
ここからは、探偵事務所の役割についてご紹介します。
尾行や張り込み調査で証拠収集をする
探偵事務所の最大の強みは、対象者に気付かれないよう調査を進められる点です。
探偵は、財務書類だけでは見えない「行動」に関する間接証拠を集めます。
また、不審な人物との接触、業務時間外の不自然な立ち寄り先、急な生活水準の変化を示す行動などを尾行や張り込みによって記録し、横領と行動の関連性を証明するための材料を収集します。
法的に有効な報告書を作成してくれる
探偵が集めた証拠は、単なるメモや写真ではありません。
調査によって得られた事実を、裁判所でも通用するレベルの報告書として提出します。
この報告書は、「証拠の時系列」や「反復性」を明確に示すことで、単なるミスではない「故意性」の立証に大きく貢献します。
また、弁護士と連携することで、刑事告訴や民事訴訟に必要な証拠として、その法的有効性を最大限に高めることが可能です。
証拠が揃った後の対処法

探偵事務所の調査により、横領の事実と「故意性」を示す証拠が揃った後は、法的措置へと移行します。
この段階でも、企業の独断は避け、法律の専門家やコンプライアンスチームと密接に連携することが重要です。
【重要】本人から自白させることのリスクとプロに任せるべき理由
疑わしい行動や記録が何度も確認された後、最終的には直接本人にその行為について問いただす場面が来ます。
しかし、不適切な自白の取り方は、企業を訴訟リスクに晒すことになりかねません。
証拠が揃っていても、本人への対応は弁護士などの法律の専門家と協力し、法的な枠組みの中で、かつ効果的に誠実な説明を引き出すことが求められます。
「本人から自白させる」ことは、「証拠をもとに適正な手続きで事実認定を進める」という視点に切り替えるべきです。
懲戒解雇を適正に行う
得られた証拠に基づき、懲戒解雇を行う場合、就業規則の規定を遵守し、適正な手続きを経る必要があります。
証拠をもとにした事実認定、弁明の機会の付与など、公平性を保った手順が不可欠です。
関連記事:従業員の不正行為が発覚したら?対処の流れと処分について解説
刑事告訴・民事訴訟を検討する
横領の被害額が大きい場合や、企業としての強い意志を示す必要がある場合は、次の法的措置を検討します。
- 刑事告訴……警察に被害届を提出し、加害者の刑事責任を追及します。
- 民事訴訟……損害賠償請求を行い、企業が被った金銭的被害の回復を図ります。
これらの手続きは弁護士の専門的なサポートが必須となり、「証拠集めは探偵、法的手続きは弁護士」という連携フローが最もスムーズで確実な問題解決へとつながります。
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まとめ|業務上横領の証拠がない時は探偵にご相談を
業務上横領を証明するためには、客観的に見て故意に行為を働いたかどうかを示す証拠を集めることが非常に重要です。
また、証拠を集める際にも対象者に気付かれないよう慎重に対応することが求められます。
しかし、これらの対応を一企業として迅速に、かつ法的に有効な形で行うことは困難です。
不正行為の証拠を集めることに強みを持つ探偵事務所にご相談いただくことが、手元に証拠がない状態からでも、問題を解決し、企業を守るための最も確実な一歩となります。
当社「T.L探偵事務所」では、「横領の疑いがあるが証拠がない」という状況に対応した調査を実施し、トラブルを解決してきた実績があります。
もし、会社内で横領の疑いがある問題が発覚した際は、まずは一度ご相談ください。