【要確認】過去最多!令和5年の認知症による行方不明者数
令和5年の認知症徘徊による行方不明者の数・発見率(生存率)
警視庁の発表によると、令和5年のうちに認知症(または疑いがある人)による行方不明者数は約1万9,039人。
これは平成24年の統計開始以降で過去最多となっています。
このうち、所在が確認できたのは約74%にあたる1万8,221人。
発見までにかかった期間・日数は、行方不明届が受理された当日に発見されたのが13,517人、次いで2〜3日以内が4,471人、4〜7日以内が131人となっています。
(参考元:警視庁「令和5年における行方明者の状況」)
上記の人数は「警察に届け出があったもの」のみです。
警察に届け出がない数を含めると、行方不明者数はもっと多くなると推測されます。
令和5年の認知症徘徊による死亡者数
令和5年の認知症(または疑いがある人)による行方不明者数約1万9,039人のうち、死亡が確認されたのは全体の3%にあたる553人。
死因は明らかにされていませんが、東京都健康長寿医療センターの発表によると徘徊による死因には次のようなものがあるようです。
- 溺死
- 低体温症
- 交通事故
- 病気
(参考記事:東京都健康長寿医療センター「認知症における行方不明」)
危険を認識・回避する能力の認知症が低下すると、不慮の事故に遭遇しやすくなります。
また長時間歩いたことで低体温症を発症し、死亡に至るケースも多いようです。
当然のことながら、多くのご家庭で対策を取られていたことでしょう。
しかし対策が不十分だったことや見守る人数が少なかったことなど、さまざまな理由で徘徊に至ってしまったことが予測されます。
対策をしっかりするのはもちろん、万が一のときに備え「早期に探し出す方法」を家族で共有しておくことを強くおすすめします。
認知症による徘徊防止・対策に役立つグッズ
【服・バッグ・靴・自転車に】GPS機能付きグッズ
GPS機能が搭載されているアイテムを身につけておけば、徘徊したときもある程度の居場所を特定することができます。
最近は高齢者向けのアイテムも多く、本人が意識せず持ち歩けるタイプも豊富です。
- 首からぶら下げるネックレスタイプ
- バッグや鍵などに取り付けられるキーホルダータイプ
- 服に縫い付られる防水ケース付きGPS
- GPS機器を入れるポケットがついている靴
- 自転車や手押し車、電動カートに取り付けられる充電式GPS
自治体によっては無料レンタルをおこなっているところもありますので、検索、または事前に相談してみましょう。
【玄関・窓に】内鍵・二重ロック・ストッパー
玄関や窓の手の届かない場所に内鍵やストッパーをつけておくと徘徊防止に効果が期待できます。
簡易的なものではなく、あえて複雑化されているもの(南京錠、パスワードで解除するデジタルロック式など)などが良いでしょう。
また、赤外線で人の動きを感知し、離れた場所にいる介護者に音や光でお知らせするワイヤレスチャイムを取り付けるのもおすすめです。
配線不要で簡単に取り付けられるタイプも多く販売されていますのでぜひチェックしてみてください。
【服・靴・帽子】お名前シール
万が一のときに備え、服や下着、帽子や杖、靴や靴下など身に着けるものに名前・住所・連絡先の電話番号を書いておくのも対策のひとつです。
とはいえ、すべてのものに手書きしたり、名札を縫い付けたりするのは大変な作業になります。
できるだけ簡単に済ませたいときは、手芸店や専門店に「布に貼れるお名前シール」を発注しましょう。
徘徊対策として販売されているお名前シールは、1枚1枚に名前や連絡先が印刷されており、アイロン不要で簡単に貼ることができます。
さらに洗濯しても雨にぬれても剥がれにくいのが特徴です。
50枚セットで3,000円前後で発注・購入できますので、ぜひ検討してみてください。
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認知症の徘徊に備える基本対策
行政・自治体・地域包括支援センターに相談
ご家族に認知症の方がいるとき、または疑いがある方がいるときは、各市町村役場の福祉課、または各市町村が設置主体となっている地域包括支援センターに相談しましょう。
自治体によっては、見守りネットワークなどの体制が整っているところもあります。
事前に相談し、登録しておけば万が一行方不明になったときに捜査協力してもらうことも可能です。
(参考元:厚生労働省「地域包括支援センターの業務」)
病院を受診する・処方された薬を服用する
認知症の症状があるときは専門医を受診し、必要に応じて薬を処方してもらいましょう。
初期であれば適切な治療と服用薬で進行を遅らせることが可能です。
また薬の効果で生活・睡眠パターンが整い、結果的に徘徊の症状が改善することがあります。
専門医や相談窓口については、厚生労働省「認知症に関する相談先」でご確認ください。
生活リズムを整える
認知症の症状が進むと、昼夜逆転生活になりやすくなります。
初期症状のうちから起床・食事・運動(散歩)・就寝のリズムを整え、規則正しい生活が送れるよう促してあげましょう。
生活リズムが整えば精神も安定しやすくなり、また朝は自然と起きて夜は自然に眠くなるなどの体内時計も整いやすくなります。
運動・散歩に付き合う
日中に適度な運動(ストレッチやラジオ体操)をしたり、散歩したりなど、身体をほどよく疲れさせると夜によく眠れるようになり夜間の徘徊防止に繋がります。
もちろん1人での行動はリスクを伴うので、必ず介護者が付き合ってあげてください。
身体を動かすのが難しいときは、家の掃除や洗濯物干し、庭のお手入れやちょっとしたDIYなどを手伝ってもらうのも良いでしょう。
ご近所・地域との連携
ご近所の方々に事情を話し、「もしも1人で歩いているところを見かけたら連絡をください」とお願いしておきましょう。
できれば本人が立ち寄りそうなお店、施設にも事前に相談し、協力を求めておくのもおすすめです。
ご近所とのお付き合いがないときは、地域の民生委員に相談しておくのも有効です。
(参考元:厚生労働省「ご存じですか?地域の身近な相談相手「民生委員・児童委員」」)
デイサービスを活用する
定期的にデイサービスを利用し、外部の人間と触れ合うのも心身に良い影響を与えます。
認知症患者に対応しているデイサービスであれば、機能訓練やレクリエーションを通じて心身機能の維持・向上を目指すサービスを受けることも可能です。
短時間ではありますが、デイサービスを利用することが介護者の息抜きやストレスの緩和にも繋がるでしょう。
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万が一のために!認知症の徘徊で行方不明になったときの探し方
どんなに徘徊防止・対策に努めても、ふとしたことから徘徊に繋がることがあります。
万が一の事態に備え、早期に探し出す術を家族で共有しておきましょう。
【要確認】認知症の人が徘徊する理由・行き先
認知症高齢者の徘徊は、認知機能の低下から起こるものです。
訳もなく歩いているのではなく、本人なりの理由があって結果的に道に迷ってしまう(行き方・帰り方を忘れる)ケースがほとんどだといわれています。
- 買い物・散歩に出かけて迷ってしまった
- 職場(仕事)に出勤しようとして道が分からなくなった
- 子供のお迎え(保育園・幼稚園・小中学校など)に行き迷子になった
- 無くしたものを探しに外に出てしまった
- 家族の顔を忘れ、知らない人が家にいることが不安になり外に出た
- トイレを探そうとして外に出てしまった
認知症による徘徊は、時間が経てば経つほど発見率も生存率も低下します。
できるだけ当日中に見つけるためにも、探し方の手順・ポイントを抑えておくことはとても重要なことです。
介護者だけでなく、家族や身内で共有しておくことをおすすめします。
警察への行方不明者届の提出
認知症の方が行方不明になったら、できるだけ早く警察に通報し行方不明届を提出しましょう。
「すぐに見つかるだろう」「前回もすぐに見つかった」「警察に通報するのはちょっと…」
などと軽視すると、思いもよらない結末を迎えることがあります。
自分たちだけで探そうとせず、必ず警察に相談し、捜査に協力を求めましょう。
市町村役場・地域包括支援センターへの連絡
各市町村役場や地域包括支援センターでは、認知症による徘徊に素早く対応できる体制が整えられています。
とはいえ、事前に何の相談もしていない場合は早期の対応が難しいこともあるでしょう。
前述したように、徘徊に備える対策として事前に相談(必要に応じて登録)しておくことを強くおすすめします。
どこにいるか推測
認知症による徘徊者が発見される場所には次のようなところがあります。
- 散歩・買い物コース(公園・よく行く店など)
- 過去に住んでいた家・実家
- 過去に勤めていた会社
- 親しい人の家周辺(友達宅・親せき宅など)
- 習慣的に訪ねていた場所(会社・駅・田畑・神社・お墓など)
ときに、自宅の押し入れや物置の中などにいることもあります。
必ず家の中も念入りに探すようにしましょう。
探す人・探さない人に分かれる
徘徊者のなかには、いったんは屋外に徘徊したものの、きちんと自宅に帰るケースも少なくありません。
家族全員が探しに行くのではなく、必ず誰かが家に待機し、本人が帰ってくるのを待ちましょう。
探偵に人探し調査を依頼する
人手を増やしたいとき、また早期に発見したいときは、探偵に人探し調査を依頼するのもひとつの方法です。
探偵に調査依頼をする際には、次のようなものを準備しておきましょう。
- 徘徊者の氏名・生年月日
- 写真(顔写真・全体写真をそれぞれ数枚)
- 身体的特徴(身長・体重・体格・髪型・ホクロの有無など)
- 徘徊に気づいた日時
- 心当たりの有無
- 徘徊当時・行方不明当時の服装(帽子・靴・カバンなども)
- 予測される持ち物(携帯電話・GPS機器など)
- 本人が良くいく場所・店・散歩コース
- 過去の徘徊歴と発見場所
- 交友関係など
探偵は調査のプロです。
独自の捜査網やネットワーク、これまでの経験と知識など、さまざまな方法をもとに対象者を探し出していきます。
人探し調査の費用は調査時間・範囲などによって異なりますが、調査員1名あたり1時間8000〜15000円前後が目安です。
ほとんどの探偵事務所で無料相談・見積もりをおこなっていますので、依頼する・しないに限らず相談だけでもしてみることをおすすめします。
まとめ
認知症の徘徊防止グッズや対策にはさまざまなものがあり、行政のサービスも整っています。
まずは、徘徊がおこらないよう防止対策をしっかり整えることを意識し、同時に万が一のときに備えて早期に探し出す・見つけ出す方法を知っておくことが重要です。
もしも徘徊後に行方不明になったときは、すぐに警察や行政、地域包括支援センターなどに連絡し、必要に応じて探偵に人探し調査を依頼しましょう。
徘徊後の発見率・生存率は、時間が経過するごとに低下していきます。
悲しい結末を迎えないためにも、手際よく進めていくことが大切です。
「徘徊を防止すること」、そして「行方不明になったときの手順・探し方を頭に入れておくこと」
の2つを意識しつつ、認知症の方がストレスを貯めないよう過ごしやすい環境を整えてあげてください。