【前提】モラハラ夫・妻とあっさり離婚するのは難しい
夫や妻のモラハラが原因で離婚をする場合、あっさりと離婚をするのは難しい傾向にあります。
なぜあっさりと離婚できないのか、まずはその理由について確認しておきましょう。
理由1. 相手はモラハラをしている自覚がない
モラハラをしている側は、自分の言動がモラハラであることを理解していません。
むしろ正しい行為とすら思っており、「あなたの言動はモラハラだ」と指摘しても「モラハラなんてしてない」「大げさ」「お前が悪いから注意しているだけ」などと主張するケースが多いようです。
夫婦間の話し合いに応じることも少なく、例え話し合えたとしても自分の言動がモラハラであることを認めず「お前が悪い」「離婚はしない」などと勝手に結論付ける傾向があります。
理由2. 被害者側は逆らえない
夫・妻からのモラハラ被害に遭っている側は、これまでの精神的ダメージにより相手を恐れていることがほとんどです。
「強く言われると反論できなくなる」「長時間話し合うのが怖い」という人が多く、離婚の話すら切り出せない人も珍しくありません。
周囲に相談しても理解されにくく、ときにモラハラ夫・妻側に立つ人たち(友人・知人・相手の父親・母親など)から「あんないい人いないよ」「あなたにも原因があるのでは?」などの言葉をかけられ、さらに追い詰められるケースも少なくないようです。
理由3. 離婚事由に当たらないことがある
離婚事由とは、裁判において離婚が認められる離婚原因のこと。
日本の法律では、次の5つに該当する場合は離婚が認められるよう定めています。
裁判上の離婚
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
(引用元:e-GOV法令検索「民法770条」)
モラハラ離婚が該当し得るのは、上記の「五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」。
しかし、モラハラは周囲から理解されづらいため、裁判においても離婚が認められない可能性が考えられます。
さらに夫・妻はモラハラをしている自覚がないため、
「そんなつもりはなかった」「相手を思ってこその言動だった」「今後は相手に寄り添っていく」
など反省の色を見せれば、離婚事由に該当しないと判定されることもあるでしょう。
これらのことから、モラハラ夫・妻とあっさり離婚するのは難しいと考えられます。
離婚を成立させるには、事前の準備と長期戦に挑む覚悟が必要だと認識しておきましょう。
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モラハラ夫・妻と離婚するための準備・手順
【要確認】モラハラの定義とは?事例を紹介
まずは自分が受けている被害がモラハラに該当するか否かを確認しておきましょう。
【モラハラの事例】
- [ ] 人格を否定される
- [ ] 自分の考えを押し付けられる
- [ ] 相手の考えに反論すると暴言で責められる
- [ ] 些細なミスを強い言葉で責められる
- [ ] 不機嫌な態度を取られることが多い
- [ ] 会話が成り立たない(無視される、話を否定されるなど)
- [ ] 経済的な圧迫行為がある(生活費を渡さない、レシートを細かくチェックされるなど)
- [ ] 実家や友人と交流させない
- [ ] 束縛がひどい(自由に外出できない、仕事を制限されるなど)
日常生活において上記のような言動がある場合は、モラハラに該当する可能性が高いと考えられます。
手順1. モラハラの証拠を集める
何度もお伝えしている通り、モラハラは周囲の人たちからは理解されにくい傾向にあります。
よって、確固たる証拠を集め、モラハラを立証させることが何よりも重要。
モラハラの証拠として有効なものには下記のようなものがあります。
- 隠しカメラを設置し、モラハラの現場を撮影する
- 暴言を録音する
- モラハラをされた日時・場所・相手の言動を日記に具体的に記録する
- モラハラ夫・妻から送られてきたメール・LINE・メッセージはバックアップを取っておく(スクリーンショットも有効)
- 心身に異常が出ているときは精神科・心療内科を受診し、診断書をもらう
証拠がないと、いざ裁判になったときに離婚が認められないことがあります。
些細なことであっても証拠になり得るものはすべて集めるという意識を持っておきましょう。
また、証拠を集めていることが相手にバレてしまうと捨てられる恐れがあります。
絶対に見つからないよう気を付けましょう。
証拠がない状態で離婚を切り出すと、相手が態度を変えて新たなモラハラの証拠が掴めなくなる恐れがあります。
証拠が掴めるまでは離婚を切り出さないようご注意ください。
手順2. 別居後の生活について計画を立てる
離婚後、または別居後の生活について考えておくのも大切な準備のひとつです。
- お金のこと(財産分与・別居後の生活費・子どもにかかる費用など)
- 新しい住まいの確保
- 離婚後にしなければならない手続きの確認
- 子どもがいる場合は親権を取るのか否か、転校が必要な場合は手続きの確認
- 公的支援の確認(生活保護・ひとり親応援制度など)1人親家庭への支援など)
また、各自治体では離婚や生活困窮に関する公的な相談窓口を設けています。
現況や自分の気持ちを聞いてもらい、どう動くのがベストなのかアドバイスをもらうのもおすすめです。
手順3. 弁護士に相談
法律のプロ・弁護士に相談すれば、有利に離婚する方法や法的な知識、さらには今のうちにやっておくべきことや今後起こり得ることについての対策などさまざまな情報を収集することができます。
気になる弁護士費用はもちろん、慰謝料額や養育費などお金についての不安も緩和されることでしょう。
多くの自治体、または各弁護士事務所で無料法律相談会を実施していますので、まずは無料の範囲から利用してみましょう。
弁護士に依頼すれば、夫・妻と会わずに離婚手続きを進めることが可能です。
「モラハラ夫・妻に離婚を切り出すのが怖い」「恐怖心で話し合いができない」などといったときは、離婚問題に強い弁護士に相談・依頼することを強くおすすめします。
手順4. 別居
モラハラ夫・妻と同居している状態では、離婚の話し合いがスムーズに進まない可能性があります。
これまでの生活を振り返ると「恐怖心から自分の気持ちを上手に伝えられない」「こちらの言葉を聞いてくれない」といったことが思い出されるのではないでしょうか。
また「これからは暴言を吐かないように気を付ける」「態度を改めるから許してほしい」などしおらしく言われると、つい許してしまう可能性も考えられるでしょう。
そうならないためにも物理的に相手から離れ、お互いが冷静になったうえで離婚についての話し合い(協議離婚)をすることが必要です。
もちろん、協議の際には弁護士への依頼も検討しましょう。
手順5. 協議で決まらない場合は調停・裁判
話し合い(協議)で離婚が決まらない場合は、家庭裁判所に離婚調停を申し込みましょう。
離婚調停は、家庭裁判所の調停委員を交えて話し合いをする離婚方法です。
調停委員はどちらの味方にもならず、フラットな立場で離婚すべきか否か、紛争解決について考えてくれます。
調停で離婚問題が解決しない場合、裁判離婚へと進みます。ここで重要なカギを握るのがモラハラの証拠。
裁判官に離婚を認めてもらうためにも、事前準備はしっかりおこなっておきましょう。
弁護士に依頼した場合、あなたの代わりに代理人として調停・裁判に出席してくれます。
弁護士は法律の知識を熟知しているため断然こちら側が有利になり、精神的負担の軽減にも繋がるでしょう。
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モラハラ離婚の慰謝料の相場はいくら?
配偶者のモラハラが原因で離婚した場合の慰謝料の相場は、だいたい50〜300万円程度。
婚姻期間やモラハラを受けていた期間、また言動の悪質性や被害者が受けた精神的ダメージの大きさなど、さまざまな事情が考慮されます。
参考までに、慰謝料が高くなった事例について見てみましょう。
- 加害者のモラハラにより、被害者側が精神疾患を発症した
- 加害者の年収が高い
- 婚姻期間が長い
- 加害者のモラハラが子どもにも悪影響を及ぼしている
上記のような事例があります。
慰謝料の交渉をする際も、弁護士のサポートがあるほうが断然有利。
支払いが不安な場合は相談の際に弁護士に相談するか、分割払いや後払いができる弁護士事務所への依頼を検討しましょう。
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