旦那・妻の宗教を理由に離婚できる?
配偶者の宗教を理由に離婚できるケースには「お互いが離婚に合意したとき」と「裁判で認められたとき」の2つのケースがあります。
離婚できるケース1. お互いが離婚に合意したとき
宗教に限らず、夫婦ともに離婚に合意すれば離婚をすることが可能です。
例えば「旦那の宗教活動が気に入らないから離婚したい」「妻が宗教活動に理解がないから離婚したい」など、お互いの意見が「離婚」で一致した場合はスムーズに離婚に至ることもあるでしょう。
これとは逆に、夫婦のどちらかが「相手の宗教活動に耐えられない。離婚したい」と主張し、もう一方が「離婚はしたくない。
宗教の素晴らしさを理解してほしい」などと反論した場合、どちらかが思いを飲み込むか、調停離婚・裁判離婚などに踏み出す必要があるでしょう。
離婚できるケース2. 裁判で認められたとき
どうしても宗教にハマった旦那・妻と離婚したい場合は、調停・裁判へと進めることで離婚が認められることがあります。
- 調停離婚…家庭裁判所の調停制度を利用して離婚をすること。夫婦の間に調停委員が入り、離婚問題や慰謝料、親権や子供の面会交流、財産分与などについて一緒に話し合ってくれます。
- 裁判離婚…調停を経てもどちらかが離婚に合意しなかった場合は裁判となります。裁判官に離婚を認めてもらえれば、相手が合意しなくとも離婚をすることが可能です。
(参考元:裁判所「夫婦関係調整調停(離婚)」 「離婚」)
このように、夫婦の意見が合致しないときは調停・裁判と進むことで離婚をすることが可能です。
しかし調停や裁判は長引くことが多く、決着がつかずに何年も夫婦関係が継続されることも珍しくありません。
できるだけ早く決着をつけたいときは、弁護士や国の機関へ相談しアドバイスを求めることをおすすめします。
相談窓口: 日本司法支援センター 法テラス「霊感商法」、法務省「人権相談」
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宗教は離婚事由になる?離婚が成立した事例も解説
離婚事由になる宗教活動とは
宗教問題で離婚をするとき、裁判の判断基準となるのは「宗教活動が離婚事由になるか否か」ということです。
【民法で定められている離婚事由】
一 配偶者に不貞な行為があったとき。
二 配偶者から悪意で遺棄されたとき。
三 配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
四 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
五 その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。
引用元:e-GOV法令検索「民法770条1項」
例えば、次のような行動・行為は離婚事由に該当します。
- 家族の生活費よりも宗教への寄付を優先する…「配偶者から悪意で遺棄されたとき」に該当
- 家事や育児を放棄してまで宗教活動をする、宗教活動に参加させるために子供に学校を休ませる…「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。」に該当
- 旦那(または妻)が宗教関係者と浮気した…「配偶者に不貞な行為があったとき」に該当
逆に宗教活動と日頃の生活(家事・育児・仕事)が両立できているのであれば、離婚が認められない=離婚できないこともあります。
宗教に限らず、夫婦仲がこじれて別居した場合、別居期間が5年以上続いたときは裁判で離婚が認められることが多いようです。
ただし、別居期間が5年未満の場合でも離婚が認められるケースもあります。
宗教が理由で離婚が成立した事例
結婚後に妻が宗教に入信し、熱心に活動するようになった。
生活費をお布施に使うようになり、生活が成り立たなくなったことで夫は離婚を決意。
妻は話し合いに応じず、調停の場に来なかったり、夫の電話やLINEをブロックしたり、自身の弟を代理人にするなどの問題行動はあったものの、最終的に離婚が成立。
(参考文献:niftyニュース「妻がカルト宗教にハマって離婚した男性の回想「生活費もお布施に使われ崩壊しました」」)
結婚後、夫がスピリチュアル団体に心酔。
平日は仕事、週末は集会に通うなど熱心な活動をおこない、家事や育児に参加することもなかった。
妻が家族でハワイに行くつもりで貯金していたお金を「スピリチュアル修行」の名目でインドに行く費用に使ったりなどの問題行動が増え、妻は離婚を決意。
調停により離婚が成立。
(参考文献:東洋経済「33歳「幼児残し修行に出た夫」と決別した妻の今」)
妻がクローゼットの中に祭壇を隠していたことが発覚。
夫に黙って宗教に入信し、子供にも強要していたことも分かった。夫は理解しようと努力したものの、生活にほころびが生まれるようになり離婚に至った。
(参考文献:NEWSポストセブン「夫婦間の宗教トラブル クローゼットに祭壇を見つけて…」)
上記のほかにもさまざまな事例があります。
- 結婚後、夫が宗教を信仰していることをカミングアウト。
別の宗教を信仰していた妻と信仰心の違いから対立するようになり、離婚が成立。
- 子供がいじめられたことがきっかけで宗教に入信した妻と別居期間を経て離婚
- 夫が宗教二世であることを結婚後にカミングアウト。義実家も熱心に宗教活動をおこなっていることを知る。
同じ宗教に入会させられたり、毎日のように教団の雑用をさせられたりしたことから別居、のちに離婚。
- 結婚後に妻が宗教に入信。考え方の違いで夫婦関係が悪化し別居。別居後も妻は宗教活動を自粛せず、夫婦間の仲を良くする努力もしなかった。
7年の別居生活ののち、裁判にて離婚が成立。
- 子供の病気がきっかけで妻が宗教にハマってしまった。いったんは妻が態度を改めたため夫婦関係が良好になったものの、子どもが亡くなったことで妻が再び宗教に頼るように。
妻が家を出ていき、夫が家庭裁判所に離婚請求をおこない離婚が成立。
- 結婚後に妻が宗教に入信。集会への参加や布教活動、仏式の葬儀や法事、節句などの行事への参加を拒むようになる。
ついには子供にも宗教活動を強いるようになり、夫婦関係が悪化し離婚が成立。
このように、宗教が原因で離婚に至るケースには多くの事例があります。
共通しているのは、民法で定められている離婚事由の「配偶者から悪意で遺棄されたとき」や「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」に当てはまっていること。
夫や妻の宗教を理由に離婚する場合、婚姻生活を続けていけないことを証明することが必須条件となるでしょう。
過度な宗教活動があったときは慰謝料の請求も可能
配偶者の過度な宗教活動で離婚する場合、一方の配偶者は慰謝料を請求することができます。
(不法行為による損害賠償)
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
(財産以外の損害の賠償)
第七百十条 他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。
(引用元:e-GOV法令検索「民法709条、710条」)
夫や妻の宗教活動により夫婦関係が悪くなり、一方が精神的苦痛を感じている場合は慰謝料を請求することが可能です。
これは結婚後に入信したケースも、結婚前から入信していたのに結婚後にカミングアウトしたケースも含みます。
慰謝料の相場は、おおよそ50万円〜300万円。
離婚の原因や婚姻期間、年収や子どもの有無などによって異なるため、詳しい金額を知りたいときは弁護士に相談してみましょう。
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夫・妻の宗教活動が限界!離婚前にやるべきこと
やるべきこと1. 過度な宗教活動の証拠を残しておく
前述したように、夫や妻の宗教を理由に離婚したい場合は民法で定められている離婚事由「配偶者から悪意で遺棄されたとき」や「その他婚姻を継続し難い重大な事由」を証明する必要があります。
証拠となり得るものは録音・録画するなど、動かぬ証拠を残しておきましょう。毎日の言動を日記に記録しておくのもおすすめです。
やるべきこと2. 寄付額・お布施額を確認する
婚姻生活に悪影響を及ぼすような多額な寄付・お布施をおこなっていた場合は離婚事由の「配偶者から悪意で遺棄されたとき」に該当します。
よって、月単位や年単位でどの程度の寄付・お布施をおこなっているのか、できる範囲で確認しておきましょう。
例えば通帳の記録や振込明細書など、第三者から見ても「宗教団体へ寄付行為があったこと」が分かるものが理想です。
やるべきこと3. 専門家に相談する
冒頭でもお伝えしたように、日本では宗教の自由が認められています。
例え配偶者であろうと「個人の信仰心を咎めることができない」ことが前提になるため、通常の離婚よりも揉める傾向が高くなります。
よって、宗教が原因で離婚する場合には「宗教が生活に悪影響を及ぼしている」ことを示すことが重要。
もちろん個人で証拠を集めて立証することも可能ですが、できれば離婚や宗教問題に強い専門家に一度でも相談しておくほうが安心です。
慰謝料の請求や調停・裁判に備えておきたいときは法律のプロ・弁護士に、過度な宗教活動の証拠を集めたいときは調査のプロ・探偵事務所に相談し、プロ目線でのアドバイスを受けることをおすすめします。
やるべきこと4. 宗教関係者からの嫌がらせに備える
宗教が原因で離婚問題が発生したとき、宗教関係者が夫婦間の協議に立ち入ってくる可能性があります。
- 夫、または妻の宗教に理解を示すべき
- あなたの信仰心が足りないから夫婦仲が悪くなる
- 夫婦揃って入信すれば、夫婦仲が改善され幸せな生活が送れるようになる
- 離婚すると地獄に落ちる
このようなときに備え、録音・録画の準備をしておくのがおすすめです。
とはいえ、熱心な信仰心を持つ人たちを相手に個人で対応するのは限度があります。
強い口調で責め立てられたり、毎日のように訪問されたりなど、精神的に疲れてしまうこともあるでしょう。
このようなときは無理に反論せず、経験のある弁護士、または嫌がらせ問題に強い探偵事務所に相談し、状況に応じた対応策を求めることを強くおすすめします。