家庭内別居とは
一般的に家庭内別居とは、同じ家に暮らしていながらも、夫婦関係は悪化しており、寝室や食事を別にしている状態をいいます。
家庭内別居とは具体的に以下のような状態を指します。
- 別々の部屋で過ごしていて、顔を合わせない
- 一緒に食事をとらない
- 会話をしない
- お互いが何をしているかわからない
- お互いのための家事をしない
- 寝室が別で性交渉もない
ただし、家庭内別居には法律上の明確な定義はありません。
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家庭内別居のメリット・デメリット
夫婦仲が悪化しているにもかかわらず、離婚や別居ではなく家庭内別居を選ぶ夫婦が少なくないのは、一体どのようなメリットがあるからなのでしょうか。
家庭内別居には離婚や別居にはないメリットがあると同時に、もちろんデメリットも存在します。
そこで、ここからは家庭内別居のメリット・デメリットについて解説していきます。
家庭内別居のメリット
家庭内別居のメリットは、離婚や別居に比べると子どもへの影響が少ないことが挙げられます。
家庭内別居の場合、両親共にそのままの家に住み続けるので転校の必要はないことや、両親が揃っていることから子どもを取り巻く環境に変化がありません。
また、経済的な負担が少ないこともメリットのひとつです。
家庭内別居の場合、離婚や別居をすると自分一人で生計を立てなければならないところを、まだ一緒に暮らしているので夫婦で生活費を分担することができます。
さらに、離婚をしてしまうと慰謝料や財産分与を始め、親権や養育費といった様々な話し合いと取り決めが必要になりますが、家庭内別居の場合はそのような煩雑な手続きが必要ないというメリットがあります。
家庭内別居のデメリット
家庭内別居のデメリットとは、同じ家に暮らしていることから生じるストレスです。
顔を合わせず、会話もしないようにしてるといってもやはり同じ家に暮らしているので、完全にお互いの存在を無視できる訳ではありません。
相手の些細な行動や生活習慣などを目にして、イライラとストレスが募ることがあります。
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家庭内別居の離婚率とは
ノマドマーケティング株式会社が実施したとあるアンケート調査において、30歳以上の男女で婚姻関係者100名に調査を行った結果、家庭内別居の経験があると答えた男女は全体の約44%という結果が出ています。
さらにその後の離婚率について調査してみると、家庭内別居の経験がある男女のうち、83%は実際に離婚に至っているという結果が出ています。
家庭内別居をするほど夫婦関係が悪化している場合、そのまま関係を修復できずに離婚に至る可能性がかなり高いということがわかります。
家庭内別居で離婚をするには?
家庭内別居から離婚に至る夫婦が多いとはいえ、家庭内別居を直接の理由にして離婚することはできるのでしょうか。
そして家庭内別居から離婚をするためには、どのような方法があるのかをご紹介します。
家庭内別居は離婚の理由になるか
もし家庭内別居中に離婚したいと申し出て、相手が離婚に同意せずに調停や裁判に発展した場合、離婚の理由が「家庭内別居状態である」という理由だけでは離婚を認められない場合があります。
民法第770条では、夫婦が離婚を請求できる理由として認められる「法定離婚理由」として5つの事項を定めています。
①配偶者に不貞行為があった
②配偶者から悪意で遺棄された
③配偶者が3年以上生死不明の状態である
④配偶者に回復が見込めない重度の精神病がある
⑤①~④以外で夫婦生活を継続できない重大な事由がある
完全に別居している状態であれば、「婚姻関係が破綻している」として⑤が認められることがありますが、同じ家で暮らしている場合は「婚姻関係の破綻」が認められにくいことがあります。
家庭内別居を理由に離婚するための条件
なかなか離婚事由として認められにくい家庭内別居ですが、以下のような事情があれば家庭内別居を理由に離婚をすることができます。
・相手が不倫をしている
相手が不倫をしている場合は、配偶者の不貞行為として法定離婚理由の①に当てはまります。
・相手が生活費を払ってくれない
夫婦には「同居義務」「協力義務」「扶助義務」の3つの義務があります。
この「扶助義務」において収入の多い側は少ない側へ生活費を支払う義務があります。
それを怠った場合は法定離婚理由の②悪意の遺棄が成立します。
・相手から暴力やモラハラ被害を受けている
相手による暴力やモラハラは、法定離婚理由の⑤夫婦生活を継続できない重大な事由が認められます。
このように、法定離婚理由にあたる事由がある場合、家庭内別居が理由の離婚が認められやすくなります。
家庭内別居中の配偶者が離婚に応じてくれない場合の対処法
家庭内別居を理由に離婚するためには、まずは配偶者との話し合いが必要です。
しかし世間体や経済的な理由などから、配偶者が離婚に応じてくれないこともあるでしょう。
そんな時はどのような対処法があるのか、具体的にご説明しましょう。
家庭内別居から別居へ移行する
離婚への第一歩を踏み出すには、まず家庭内別居から別居へと移行しましょう。
別居は離婚を請求できる理由に該当するため、家庭内別居のままでいるよりは離婚しやすくなります。
弁護士に依頼する
家庭内別居から離婚したいという申し出に、どうしても配偶者が応じてくれない場合は、弁護士に相談をするという方法があります。
弁護士に相談すれば、交渉を弁護士に任せることができるので、当人同士で話し合いをするよりもスムーズに離婚の話し合いが進む可能性があります。
調停や裁判の申し立てをする
財産分与や慰謝料、親権、養育費など離婚にまつわる様々な取り決めがこじれてしまったり、双方の主張が食い違ってしまった場合は、家庭裁判所で離婚に関する手続きを行うことができます。
まずは離婚調停をして、解決しない場合は離婚裁判へと移行します。